焦点距離の差:その2>遠近感
ではそれぞれのワイド端で風景を撮ってみましょう。
OLYMPUS CAMEDIA C-730UltraZoom(38mm 相当). |
CASIO EXILIM EX-Z3(35mm 相当). |
RICOH Caplio G4Wide(28mm 相当). |
各機種によって明るさや色合いはいろいろ違ってくるのですが*1それはまぁおいといて。どうでしょうか。写っている広さの範囲も重要ですが、G4Wide だけやけに鳥居が遠いように思えませんか?
実は焦点距離の差は画角だけでなく、遠近感(パース)にも作用します。もうちょっと作例を見てみましょう。
Caplio G4Wide(28mm 相当) |
これをズームをテレ端にし、ウシの頭を同じくらいの大きさになるまで後ろに移動したのがこれ。
Caplio G4Wide(85mm 相当) |
これが焦点距離の差によるパースの差です。焦点距離が短くなればなるほどパースがダイナミックになり、焦点距離が長くなればなるほど遠近感は少なくなります。
もう少しわかりやすい形でお見せしましょう。
Caplio G4Wide(34mm 相当) |
Caplio G4Wide(57mm 相当) |
さらにテレ端までズームしてみましょう。
Caplio G4Wide(85mm 相当) |
逆にテレ端からの例をお見せしましょう。実は以前やった【「マクロに強い」とは何か】と同種の話なんですが……。
Caplio G4Wide(85mm 相当) |
すると……
Caplio G4Wide(34mm 相当) |
以上のことから、より自然なパースで撮影したい時は、焦点距離を長くする、つまりできるだけズームする必要があるわけです。
実は人間の目の遠近感は、焦点距離 50mm 相当と言われています。これが一眼レフの世界で 50mm レンズが標準レンズと言われている理由です。3倍ズームのデジカメなら、ちょうどズームの半分くらいですね。また 50mm 〜 80mm*3のレンズは俗に「ポートレートレンズ」と呼ばれています。これはおにゃのこを撮る時、上のウィンリィみたいに変なパースが付かず、かつバストショットを撮るのに最適な画角*4が得られるからです。世の中には 50mm 単焦点レンズ一本で仕事をしているプロカメラマンも居ます。
ただもちろん、さっきのウシなんかはあれはあれでカッコイイので、遠近感をつけてダイナミックな構図にしたいときはワイド側を使いましょう。要は使い分けです。*5
逆にワイドにするとダイナミックになる事を利用すれば、
G4Wide(ワイド端) | G4Wide(テレ端) |
「3倍ズーム」のデジカメが市場に多い理由は、使いやすい 35mm 相当のワイドから 50mm 相当という標準レンズの焦点距離を通り、80mm 相当のポートレートレンズの焦点距離も含み、もうちょっと望遠が効く、という一般的な人にとって使いやすい焦点距離をもっていることにあります。風景も撮れば人も撮るし。
ちなみに「3倍ズーム」という言葉自体は単なる焦点距離ワイド端からテレ端までの倍率の話なので、極端な話こういうデジカメも「3倍ズーム」になったりします。450mm 〜 1350mm 相当ですから、これでおにゃのこのバストショットでも撮ろうものならどこまで遠ざかればええねんという話になります。
なので、カメラ好きの人に「このデジカメ3倍ズームなんスよ」とか言っても、言われた側はいまいちピンときません。「このデジカメ 35mm 〜 105mm なんスよ」と言ったほうが「あぁ、ちょうど使いやすいところだね」とか「もうちょっと広角がほしいね」とかいうレスポンスが帰ってきます。*6
*1:ていうか露出補正してちゃんと合わせればよかった……orz
*2:G4Wide はマクロモードに入ると焦点距離 34mm 相当まで自動でズームされる。
*3:そしてたいていは開放で F2.0 以下のレンズ。
*4:おにゃのこと会話をする距離で撮影するときにちょうどいい画角が得られる。
*5:FinePix や最近の Nikon など、マクロモードにするとワイド端からズームできなくなる仕様のデジカメはこの「使い分け」ができない。また今のデジカメのマクロは「近づければ近づけるほどいい」ということになっているがこれはむしろ逆で、一眼レフの世界では「近づかなくても大きく撮れる」というのがマクロレンズの評価の基準だったりする。「1cm まで近づけるマクロ!」なんていう煽り文句は消費者をバカにしているとしか思えない。
*6:逆に一眼レフ持ちの人に「そのレンズ何倍ズーム?」とか聞くのはわりと恥ずかしい行為だったり。