35mm 換算時焦点距離

 今まで 28mm 相当だの 35mm 相当だの 105mm 相当だの言ってきたのは、実はウソです。というか、本当の焦点距離ではありません。今まで作例で使ったデジカメの本当の焦点距離は以下の通りだったりします。

EXILIM
 5.8mm 〜 17.4mm (35mm 〜 105mm 相当)
G4Wide
 4.2mm 〜 12.7mm (28mm 〜 85mm 相当)
C-730UltraZoom
 5.9mm 〜 59mm (38mm 〜 380mm 相当)
E-1
 14mm 〜 54mm (28mm 〜 108mm 相当 / ZUIKO DIGITAL 14-54mm F2.8-3.5 装着時)

 後ろにある数字、つまりいままで使ってきた「相当」がつく数字は、いろいろ言い方があるのですがこのサイトでは「35mm 換算時焦点距離と言っています。これはデジカメについているレンズの実際の焦点距離を、フィルムカメラ焦点距離に換算したものです。
 なんでこんなことするかというと。まずデジカメの CCD や CMOS と言ったセンサは、フィルムカメラがこれまで長い間使ってきた 35mm フィルム*1よりもはるかに小さいのです*2
 実際に写す画面が小さくなるので、焦点距離もそのまま短くなります。つまりデジカメのレンズとセンサの関係*3は、フィルムカメラのレンズとフィルムの関係をそのままミニチュア化したものと言えるのです。
 しかし今までフィルムカメラに慣れ親しんできた人に「このカメラの焦点距離は 4.2mm です」と言ってもピンときません。そこでミニチュア化されたレンズとセンサの関係をそのまま拡大すれば、フィルムカメラのレンズとフィルムの関係に直す事ができます。このとき、フィルムカメラ焦点距離に換算したときの焦点距離を「35mm 換算時焦点距離」と呼んでいるわけです。これだと、フィルムカメラで得た焦点距離による画角と遠近感の感覚がそのまま通用します。
 またフィルムカメラという基準を置く事で、どんなデジカメでも焦点距離による画角と遠近感の感覚に直す事が出来ます。というのも、いま市場に出ているデジカメの CCD は、デジタル一眼レフ用も合わせるとざっと数えて 10 種類の大きさ*4があり、それぞれにあわせてレンズの焦点距離が決められています。
 例えば今回使用しなかった手持ちの機材に OLYMPUS CAMEDIA X-2 があるんですが、これの焦点距離は次の通り。

X-2
 7.8mm 〜 23.4mm (38mm 〜 114mm 相当)

 同じワイド端 38mm 相当の 35mm 換算時焦点距離をもつ C-730UltraZoom の実際の焦点距離 5.9mm に比べやけに長いですよね。これは C-730UltraZoom の CCD の対角が 1/2.7 型(インチ)であるのに対し、X-2 は 1/1.8 型と一回り大きいからです。
 このように、デジカメの種類によって焦点距離はバラバラになります。ここはやはフィルムカメラ焦点距離に直して統一するのが便利でしょう。
 ちなみにデジタル一眼レフの場合、レンズを交換できますから倍率を覚えておいた方がいいです。EOS KISS DIGITAL など Canon 製は 1.6 倍(EOS 1D/1Ds/1D MarkII は除く)、D70 や D100、FinePix S2Pro などの Nikon 系と *ist DPENTAX は 1.5 倍。Foveon X3 という特殊なセンサを積んだ SD9/SD10 の SIGMA は 1.7 倍。そして俺が愛用している E-1 の OLYMPUS では 2 倍になります。つまりレンズに書いてある焦点距離(「f=50mm」*5などの書き方をしている)とこれらの数字を掛け合わせればいいわけです。たとえば 6/26 発売の SIGMA 18-125mm F3.5-5.6 DCEOS KISS DIGITAL に装着する場合、

ワイド端
18mm × 1.6 = 28.8mm 相当
テレ端
125mm × 1.6 = 200mm 相当

 というふうに換算できます。
 ただし、換算した後分かるのは画角と遠近感だけです。ボケ量に関しては換算前の焦点距離によります。たとえばさっきの E-1 の 108mm 相当のボケは、実際は 54mm なりのボケ量ということです。同じ 100mm 付近でも、たとえば Nikon D70 の標準レンズである AF-S DX Zoom Nikkor ED 18-70mm F/3.5-4.5G (IF)(テレ端 105mm 相当) のほうが70mm と、E-1 より 16mm ぶん実際の焦点距離は長いので、そのぶんボケ量は増えるのです。*6
 そのため焦点距離が極端に短いコンパクトデジカメでは、ズームをテレ端にしてもボケ量は非常に少ないです。ただしマクロに関しては違います。なぜ違うかはここでは詳しく説明しませんが、このあたりでなんとなく解説しているのでご参考までに。
 

*1:フィルムの縦幅が 35mm なことから付けられた名前。他に 135 フィルムとかライカ版とか言ったりもする。

*2:例外として Canon EOS 1DsKodak のプロ用一眼レフシリーズ、CONTAX N DIGITAL はフィルムとほぼ同じサイズの CCD / CMOS センサを搭載している。

*3:コレを「光学系」と言ってもいいかなー? と思ったんですが思いとどまりました。なんかウマい言い方ないでしょうか?>識者の方々

*4:小さいものから順に 1/3.2 型、1/2.7 型、1/2.5 型、1/2.4 型、1/1.8 型、2/3 型、4/3 型(フォーサーズ)、1.8 型(APS-C)。これに 1D/1D MarkII のものと 35mm フルサイズセンサを合わせた数。携帯電話用や DV カメラ用を合わせるとさらにすごいことに。

*5:f は小文字。大文字の F は開放 F 値のことでまた次回以降に解説。

*6:識者の方へ:デジタル一眼レフのボケ量はレンズ焦点距離よりも撮像面積に依存するとの説もあるんですが、諸説が飛び交っているため俺には断定できません。ここではわかりやすくするためレンズ焦点距離に依存するということを前提に書いています。あと実際には焦点距離もそうですがF値も関係してくることも承知しています。ここでは焦点距離に絞って話をシンプルに進めたいのであえてこうしています。