プロダクトマネージャー 寺田様にお話を伺ってきました。

 E-500体験講座のあと、Eシリーズの開発プロダクトマネージャーである寺田様にお話を伺ってきました。ちなみに先日話題になった海外サイト Foto Imagen Digitalのインタビューで応対されていた方です。*1
 
<Q:妖介 A:寺田様>

35mm F3.5マクロ、小さくて軽いですね。
そうですね。また近距離だけでなく無限遠も描写を損ねることがないようにしています。風景やポートレートでもお使いいただけますよ。

 

50mm F2.0マクロでは単体での等倍撮影(35mm換算で2倍撮影)は出来ませんでしたが、35mm F3.5では出来るようになりましたね。
はい。ただ本当に等倍撮影をするとワーキングディスタンスがツライかもしれません。ちゃんと照明をセッティングすれば問題ないでしょうが、。
(妖介注:実際にやってみたところ、等倍撮影時のワーキングディスタンスは3〜4cm程度だった。屋外の順光撮影では確実に厳しいと思われる)

 

35mm F3.5、非常にいい感触です。ただ、やはり明るさとしてF2.8は欲しかったのですが……。
ええ、しかしF2.8だとかなり大きくなりますね。今回このマクロレンズには「ダブルズームセットを購入された方が次に買われるレンズ」という位置づけがしてあります。特に年配の方が趣味ではじめる写真として、マクロは人気のあるカテゴリですから、ここに1本手軽にはじめられるレンズを用意しようと。価格や値段、また「STANDARD」カテゴライズとしてこのスペックに落ち着きました。もちろん描写には妥協していません。
(妖介注:俺も描写には心配してません)

 

マクロというとファインダが重視されると思うのですが、EシリーズのファインダはE-1を含めて狭く、そのことが不満としてあげられています。E-500は特に視認性に不満が上がっているようですが……。
各製品のターゲットごとにファインダの仕様が決まります。E-500はターゲットユーザーを想定して……ということになります。

 

それはぶっちゃけた話初心者向けでAF主体だから、ということでしょうか。
ええ、まぁ(苦笑)。

 

試用させていただいた限りでは、E-500のAFはE-1やE-300より格段に進化しているという印象を受けました。
はい、AFアルゴリズムE-300のころから改良しています。また将来ファームウェアアップデートでも対応できるところがあれば改良していきたいと考えています。デジタルならではですね。
(妖介注:E-1は暗所でAFが迷ったときに最短<->無限遠を繰り返すなどの問題があり(精度は高かったが)、E-300も若干遅い部分があったが、E-500ではかなり改善されている。測距点3点というところに目をつむればAF主体での撮影で問題はない)

 

これからのレンズラインアップなのですが、とりあえず50mm F2.0が今一番明るいレンズですよね。たとえば25mm F1.4などの明るい標準レンズなどはお考えなのでしょうか。私は単焦点であることにはこだわらないのですが、ポートレート撮影をしているともっと明るさが欲しくなります。
ZUIKO DIGITALもおおよそ必要な焦点距離のものは揃ってきたので、次は広角域を補充したり、明るい単焦点、また趣味性の高いレンズなど、ラインアップはどんどん増やしていきたいと考えています。

 

E-1後継機のファインダは面積がおおきくなるなど改良されるとみてよいのでしょうか。
具体的なことは言えないのですが、少なくともE-1のファインダのクオリティは維持したいと考えています。

 

E-1後継機というか、これからのEシリーズについてなのですが、まず今後もフルフレームトランスファーCCD(FFT-CCD)を採用していく、という方針なのでしょうか。
現在FFT-CCDを採用しているのは、現時点でFFT-CCDが最良だと考えているからです。これから先も採用するかどうかということは確約できません。さまざまな撮像素子メーカーを視野に入れながら、そのときそのときで最良のものを採用していくつもりです。

 

海外のインタビューで寺田様の「小さい企業の撮像素子も視野に入れている」という発言(
//www.webpersonal.net/fotoimagendigital/olympuse500e.htm" target="_blank">Foto Imagen Digitalのインタビューにある「we are not tied in any way with a sensor manufacturer」あたり)が話題になっていますが。:えーっと、インターネットの書き込みを時々見ているのですが、私、あれを言ったせいでクビになるそうですね(笑)。先ほども申し上げた通り、そのときそのときで最良のものを、ということです。あの発言に関しては、さまざまな撮像素子メーカーさんのものを検討していて、そのメーカーさんには大きい企業から小さい企業まで幅広く見ていますよ、という意味なんですよ。だから「小さいベンチャー企業から撮像素子を採用!」という意味ではないんです。

 

それはたとえば、4/3に参入した松下の撮像素子を採用することもありうる、ということでしょうか。
可能性としてはありますが、確実に採用しますよ、ということは言えません。

 

私個人の願望なのですが、SONY
//techon.nikkeibp.co.jp/NE/word/050427.html" target="_blank">カラムQV技術がD2Xに採用されたように、PanasonicνMAICOVICONフォーサーズに採用されると嬉しいのですが、松下さんはどう考えていらっしゃるかはわかりますか。:そこまではわかりませんね。ただ松下さんは世界でも有数の撮像素子メーカーですから、よいものを作ってくるんじゃないでしょうか。

 

E-500の話に戻りますが、失礼ながら、今回のE-500の仕様やプロモーションをみていると、OLYMPUSの過去の体制より肩の力が抜けているような気がします。OMとの決別を決意したE-300までとはプロモーションの方法がかなり違っていますね。また以前の「打倒Canon」を旗印にしていた頃より、まず業界3番手を狙うような体制になっているように思えます。
まずE-300E-500とではターゲットユーザーが違うんですよ。E-300のターゲットユーザーは「機械好きのお父さん」で、E-300のフォルムを見て「あ、ちょっとカッコイイな。他のカメラとどこか違うな」という印象を持たれる方が対象。E-500はそれに対してフィルムのころから写真を撮ってこられた方向けです。そのためにデザインもトラディショナル(伝統的)なものにしたり、OMのハイライト&シャドウコントロールを採用したりしています。つまり、E-300のような革新的なこと、E-500のような伝統を重んじるようなこと、どちらか一方だけでは上は目指せないということですね。もちろん最終的にはOLYMPUSがトップに立つ、という目標は変わりませんが、いきなりそれを狙うには、ご存じのように会社の状況としても厳しいところにありますので……。

 

なるほど。E-300のような「革新的なもの」と、E-500のような「伝統的なもの」の2つを平行して推していく、ということなのですね。
そうですね。

 

E-500についてなのですが、2つ伺いたいことがあります。1つは再生についてです。従来ですと拡大再生(×2〜14)から全画面表示(×1)に戻すにはダイヤル左回し1回で完了しましたが、今回E-500では1回では戻らなくなりました*2。実運用では「撮影→拡大してピント確認→全画面表示に戻して次の写真へ」ということが瞬時にできたのですが、今回はそれができなくなりました。
それは再生時の仕様変更の影響です。今回は、再生時にワンタッチWBボタンを押下すると、拡大する場所を指定する「ジャンプズーム」モードが新規採用されています(dpreviewのE-500レビュー内「Jump zoom / Side-by-side compare」参照)。この仕様変更により、指定した倍率(×2〜14)までの拡大と縮小(全画面表示)を2ステップで行うことができます。従来とは違った操作性になったということです。

 

なるほど。もう1つ伺いたいことなのですが、今回AEブラケティングはE-300のようにドライブモードに入っておらず、E-1のようにAEB設定とドライブモードが独立していますよね*3。ドライブモードは独立ボタンがありますが、AEB設定はメニュー内のしかも結構深いところに設置されており、ショートカットもできません。これは使いにくいと感じましたが……。
メニューにはE-500にあるブラケティング機能(AEブラケティング・ホワイトバランスブラケティング・フラッシュブラケティング・MFブラケティング)が全てまとめて並んでいるんですが、確かにAEBは使用頻度が高いので、メニュー内だと不便かもしれません。検討します。

 

[OK]ボタンを押下することで液晶表示にある各パラメータを直接変更できるUI(以下仮に「背面液晶UI」とする)に関してですが、いろんなレビューを見ているとこれについてほとんど触れられていません。今回のプロモーション展開ではプッシュしないのでしょうか。
ええ、これから展開していきます。おそらく雑誌などで言及されていくことになるでしょう。

 

E-300とE-1とでは、発色傾向がかなり違っています。特にE-300は赤みが強いですよね。まるでCAMEDIA X-2の初期ファームみたいです(ここで寺田様笑)。併用していると不便に感じるところがあるのですが。
ええ、E-300は人肌の見栄えを重視しているところがあり、それが赤みの強さにつながっていると思われます。E-500ではそれらのカラーについて「仕上がりモード」で再現しています。ビビッドはE-300ナチュラルはE-1に近い発色傾向です。特に「ナチュラル」については、今後Eシリーズのスタンダードカラーにして、どの機種にも共通に搭載していく予定です。

 

つまり、これから出るE-500やE-1後継機などをつかっても、「ナチュラル」を使えばE-1と同じ発色傾向で、かつ色の統一感を保てると言うことでしょうか。
そうです。ただ発色は撮像素子や画像処理エンジンの種類によって左右されるので、厳密に同じ発色にするという意味ではありません。あくまで傾向です。

 

画像処理エンジンと言えば、高感度ノイズの低減や、点光源や斜め線ジャギの緩和など、従来のTruePic TURBO採用機と絵作りがかなり変わっています。TruePic TURBOの世代交代が行われたのではないか、とにらんでいるのですが……。
明確に世代交代が行われた、という話はありませんね。もしそうならプロモーションの観点からも別の名前を付けることになるでしょう。

 

たとえばDIGIC→DIGIC2みたいな。
そうですね。ただ、E-300から1年経過していますし、その間画像処理エンジンの改良は重ねています。

 

コンパクトデジカメのお話を伺いたいのですが、SP-350などで28mm相当の広角レンズを搭載するようなことはないのでしょうか。
私はコンパクトの担当ではないので詳しくは存じませんが、市場としてはまだまだ望遠のほうに需要がありますから、そのニーズに応えたというところが大きいのではないでしょうか。

 

確かに望遠については運動会など一定の需要がありますね。ただ、OLYMPUSで言うとSP-500UZとSP-350とでは棲み分けができそうな気もしますが……。
SP-350はコンバージョンレンズがありますから、それで広角自体は実現できます。でもデジタル一眼レフのサブとして、広角へのニーズがあることは理解できますね。

 

話は変わりまして、先ほどネットで寺田様のクビが飛ぶといったような書き込みを見たことがあると伺いましたが、ネットの書き込みなどはチェックされているのでしょうか。
ええ、ときどきは。時間のあるときにですけど。

 

それはリサーチを兼ねるといったような……?
いえ、リサーチではなく参考としてです。市場はどういうものを求めているのかなー、といったところですね。しかしネットに書き込みをされているみなさんは本当によく考えつきますねー。我々ももっとあれくらい考えないといけないのかな、と思ってしまいます(笑)。

 

ウチの方針は話題性重視じゃないので、今回のお話はできるだけお話の意図を忠実に書くつもりですからご安心下さい(笑)。今日は本当にありがとうございました。
私のクビが飛ばないようにお願いします(笑)。ありがとうございました。

 まぁ肝心なところはうまーく回避してお話をされていた感じ(笑)でしたが、かなり面白いお話を伺うことができました。とりあえず背面液晶UIについては推していく、ということで俺的には一安心です。

 

*1:写真撮らせてもらえばよかったorz

*2:従来であれば×14だろうが×4だろうが、ダイヤルを左回しにすれば×1に戻った。だがE-500では×14の状態からダイヤルを左回しすると×10に倍率が下がるだけになってしまう。Canonなどと同じ仕様である。

*3:E-1の場合、連写によるAEBを実行するには、AEBボタンでブラケティング設定を変え、かつドライブモードで連写を選択する必要があった。