Canon EOS 20D 国内発表。(PC Watch)

 キヤノンの中堅機 EOS 10D。
 Canon が打ち出した、「カメラ業界における」デジタル一眼レフのブレイクスルー機種として知られるデジタル一眼レフ。この系譜はその後、EOS KISS DIGITAL によって「デジタルガジェット業界における」デジタル一眼レフのブレイクスルーに引き継がれ、今日のデジタル一眼レフブームを巻き起こしている。
 デジタル一眼レフの歴史を紐解けば、こと「普及」というキーワードにおいては Nikon D100 と並び記されていることであろう。カメラ業界内ではむしろ、EOS KISS DIGITAL よりも重要な機種であるかもしれない。
 EOS 10D は 2003 年初頭発売。そして今日、後継機種 EOS 20D の登場、そして EF-S マウントの本格展開で、その華やかな経歴に幕を閉じようとしている……。
□ Canon EOS 20D □

  • レンズマウントCanon EF / EF-S マウント。35mm換算時焦点距離はレンズ焦点距離の1.6倍。
  • APS-Cサイズ(22.5×15.0mm) 850 万画素 CMOS センサ。有効 820 万画素。画素ピッチは 6.4 μm。第二世代オンチップノイズ除去回路およびマイクロレンズの改良により高感度・低ノイズを実現。アスペクト比 3:2。
  • ISO感度は 100 〜 3200。
  • チップセットDIGIC II を採用。起動 0.2 秒という高速起動を実現。バッファフルから次の撮影が可能になるまで 1.1 秒。
  • シャッターは電子制御式フォーカルプレーン。シャッタースピードは 30 〜 1/8000s。最高速時はセンサシャッターとなるが、構造が CCD とは違う為、D70 で発生したスミアの発生確率は低いと思われる。
  • AF方式はTTL位相差検出方式。測距点 9 点。視線入力は今回も見送られたが、サブダイヤル上部にマルチコントローラが装備され、測距点の指定に使用できる。
  • フォーカスタイプはワンショット AF / AI サーボ AF / AI フォーカス AF / MF。
  • AF補助光あり。ただし 10D と同様内臓ストロボ使用。
  • 測光方式はTTL開放測光。分割測光は35分割測光。中央重点測光、部分測光(スポット測光に相当)も備える。
  • ホワイトバランスはオートと6つのプリセット、およびユーザセット。色温度指定も可能。また±9段のホワイトバランス補正、ホワイトバランスブラケティングも装備。
  • 色空間はsRGBに加えAdobe RGBも搭載。
  • ファインダはアイレベル式ペンタプリズムタイプ。視野率上下左右95%。倍率は0.9倍。アイポイント 20mm、視度調節幅 -3.0 〜 +1.0dpt。またフォーカシングスクリーンが改良され、明るく見やすいものになった。同時発表の万能型セットレンズ EF-S17-85mm F4-5.6 IS USM の開放 F 値の暗さをフォローできるか。
  • ミラーはクイックリターン式全面ハーフミラー。EF-S 対応駆動。
  • フラッシュ同調スピードは X=1/250s 以下。E-TTL II 自動調光に対応。
  • 内臓フラッシュは GN13(ISO100時)。オートポップアップ。位置が高くなり、レンズ焦点距離 17mm(35mm 間暫時焦点距離 27.2mm)までの画角に対応した。充電時間 3 秒。FEロック可。
  • 1.8 型 11.8 万画素TFT液晶モニタ。再生時視野率100%。輝度調節 5 段階。多少画素数に不満ありか。
  • 連写は 5コマ/s。バッファフルは JPEG で 23 枚、RAW で 6 枚。10D では RAW 9 枚までの連射が可能だった為おそらくバッファの増強はされていないが、バッファからの吐き出しが高速になった為、運用上の問題は無いとの事。またバッファ処理中の再生が可能となった。
  • PCとの接続はUSB2.0PictBridge のほか、CPダイレクト、Bubble Jet Direct対応。
  • 電源は専用リチウムイオン充電池
  • 記録媒体はマイクロドライブ対応のCF TypeII。
  • 寸法は144 × 105.5 × 71.5mm、重量685g。10D より若干小型・軽量化が図られた。
  • 9月下旬発売。予想店頭売価はボディのみ19万円、EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM とのセットが 26 万円、KISS D と同じ EF-S 18-55mm F3.5-5.6 USM とのセットが 21 万円。


 ……さて、ここからはいつもの調子で。
 正式発表されたスペックは前からリークされていた情報とほぼ同じ。順当に 10D のアップグレードですね。EOS KISS DIGITAL ユーザのみなさまに「お前ら血を売ってでも買え!」とポールによじのぼってスポットライト浴びてマイクアピールしたくなるようなドスゲぇ仕様。わたくし久しぶりに興奮しております。静かに。Canon なのに。いや Canon だからこそ。
 まず画素数ですが、同じ APS-C サイズで画素ピッチを微細化した 800 万画素ですから、一回り以上大きい EOS 1D MarkII と同じ画質は得られないにせよ、最低感度の ISO100 でのサンプルは十分高画質と言えましょう。もともと良かった暗部ノイズ耐性も相変わらず強力。懸念があるとすれば高感度時のノイズレベルですが、これは実機サンプル待ちでしょう。
 連写は 5 コマ/s と高速。これは DIGIC II の恩恵でしょうか。バッファの増強は見送られて RAW では 6 枚ですが、まぁブラケット枚数としては必要十分でしょう。JPEG では 23 枚とこれも強力。
 AF 部は測距点が 9 点に増えており、自動選択時の精度が上がる事が期待されています。ただ Canon の中堅機は AF 精度に難があり、EOS D30 からずーっとずーっと言われてきて 10D でちょっとマシになったけどやっぱりレンズによっては後ピンになりやすいという話もあったわけですが、今回の精度がどうなるか楽しみです。特に EF マウントは明るいレンズに不自由しないので AF 精度の向上は急務。
 UI はジョイスティックっぽいマルチコントローラが新設され、AF 測距点の選択や拡大再生時の移動に使えるようです。特に 10D は再生時に「メインダイヤルで拡大→[SET]ボタン押下→サブダイヤルで移動方向選択→[SET]ボタン押下→サブダイヤルで移動」という手順を踏んでいたので、マルチコントローラの導入は直感的な操作がやりやすくなり歓迎したいトピックです。
 そして Canon がコンパクトデジカメを含めてこれまで長く課題としてきた「スピード」にメスが入れられました。起動 0.2 秒という Nikon なみの高速起動を実現しており、「寝起きの悪い EOS D」というありがたくない評判はこれで払拭されたようです。これは非常にめでたい。
 さて、EOS 20D 自体には不満らしい不満は今のところありません。強いて言えば多少電池の持ちが悪いかも、くらい。ただ Canon の方針が初級〜中堅機の APS-C サイズデジタル一眼レフ用マウントとして、EF-S を本格的に展開していく事にしたのは唯一にして一番の不満です。これは今までの EOS D30/D60/10D ユーザに対する切り捨て行為に他なりません。これにはもちろん、20D が 10D の後継というよりは EOS KISS DIGITAL のアップグレードパスの位置づけに近い事に起因するのかもしれませんが、それをわざわざショートバックフォーカスにしてしまう必要があるのかどうか。そして今まで Canon 中堅層を支えてきた EOS D30/D60/10D ユーザに対してまともな標準ズームを供給してこなかったのに対する仕打ちがこれかと。もちろんすでに買い換えを考えている方も多いでしょうから大丈夫でしょうが……。
 しかしまぁ、EOS 20D の出現は今年のフォトキナで中堅デジタル一眼レフをリリースする KONICAMINOLTA と FUJIFILM に対する大きな牽制になるでしょう。例の IS つきレンズセットは多少値が張りますが、この 1 年で EOS KISS DIGITAL を使ってきて写真好きになった方にはうってつけのアップグレードパスに違いありません。
 
 尚、EOS 20D の発売に合わせて外付けフラッシュ 550EX の後継機種も発売されます。
□ Canon Speed Light 580EX. □

  • GN 58。
  • チャージ時間を 550EX より 25% 高速化。
  • デジタルカメラでの使用時、ホワイトバランスを安定させる「色温度情報通信機能」。
  • x1.6、x1.3、x1.0 など各種受像面積に合わせて最適な配光調整を行う「画面サイズ対応自動ズーム制御機能」。
  • 3LED 式 AF 補助光機能。
  • 広角 24mm から望遠 105mm までの画角に応じて照射範囲を調整する「オートクイックズーム機能」。
  • ワイドパネル使用時 14mm までの超広画角をサポート。
  • 上下左右 180°のバウンス角度。
  • FP発光によるハイスピードシンクロなどの E-TTLⅡ / E-TTL自動調光対応。
  • FEロック対応。
  • ワイヤレス多灯ストロボ撮影機能。
  • オプションでバッテリパック「CP-E3」、縦位置対応ブラケット「SB-E1」を用意。
  • 10月下旬発売。標準価格 57,750 円。


 デジタル一眼レフ向けの機能が追加され、光量が増えた外部フラッシュ。さすがにデカいですが、縦位置用ブラケットが用意されるので応用範囲が広がりそうです。
 
【追記】あ。(情報元:デジカメジン コメント欄