光学高倍率ズームデジカメ夏の陣

 さて、FZ2 もいろんな意味でめでたく発表された事ですし、ここらで高倍率ズーム機の比較を。個人的に押している順から。

  • OLYMPUS CAMEDIA C-740/750UZ 実売:¥49,800 / ¥59,800
    • 高倍率ズームブームの火付け役。C-700Z から地道に進化した本命馬。
    • 開放 F 値が F2.8 〜 3.7 だが今となっては 6 機種中一番暗くなってしまった。そのかわり、C-740UZ では 1/2.5 型 300 万画素 CCD を採用。今回の 6 機種の 300 万画素クラスでは頭一つ飛びぬけた画質。ただし白飛びしやすい。C-750UZ は逆にクラス最小の画素ピッチ。なお、どちらもプロバーガンマテクノロジーとアドバンスドノイズフィルターで矯正された画像のため、やや線が太い絵になる。また色合いがややこってり気味なので好みが分かれるかも。赤の再現性は悪くない。
    • AF は遅い。ただしきちんと合掌さえすれば正確。暗いところは苦手。マニュアルフォーカスも装備。
    • 起動は約 4 秒。あまり速くない。
    • 特筆すべきはマクロ。ズーム位置約 60mm でレンズ前 3cm という高倍率ズーム機最強クラスのスーパーマクロを備える。望遠マクロなので背景のボケがめちゃくちゃ楽しい。望遠タイプこそマクロが強くあるべきだとおもいまつ。
    • 各種マニュアル機能が豊富。露出はP/A/S/M全て揃え、±2EVの露出補正を含め 1/3 EV ステップで設定可能。またホワイトバランスもオートのほか 6 つのプリセットと±7段階のマニュアル補正を備える。シーンモードも OLYMPUS 独自のセルフポートレートモード(自分撮り専用モード)を含め 6 つ装備。
    • シャッタースピードは P/A/S で 1 〜 1/1000 秒。M で最長 16 秒(夜景モードおよびスローシンクロモードで 4 秒まで)。
    • 絞りはワイド端/テレ端 F8 まで。
    • 連写は弱い。1.3 コマ/秒。スポーツ撮りにはむかないかも。
    • 動画は320x240 / 160x120 の QuickTime MotionJPEG。恐らく 15fps。C-750UZ は音声つき(C-740UZ はつかない)。
    • 液晶は高倍率ズーム機にありがちな背面と EVF (液晶ビューファインダ)との排他切替型。C-730UZ では背面液晶のみ ON/OFF が出来たが、今回から排他型になった。
    • アクセサリ。C-750UZ はホットシューを備え、純正ストロボが使える。ワイコン・テレコン・マクロの各種純正コンバーションレンズを用意。サードパーティ製のものも豊富。今回からカメラケースは別売りになったが、待望の防水ハウジングがラインナップされた。C-750UZ で使えるリモコンは OLYMPUS 全機種共通タイプ。
    • 電池。単3電池 x4 or CR-V3 x2。アルカリでも十分にもつ。CR-V3 x2 にするとうまくいけば 1 週間の旅行でバッテリ交換せずに使える。
    • メモリは xD。512MB にも対応。
    • 総合すると他社に一歩譲る面も多いが、値段と性能のバランスが良い機種。電池で選ぶならコレ。
  • MiNOLTA DiMAGE Z1 実売:¥49,800
    • 技術の MiNOLTA が満を持して高倍率ズーム機をリリース。MiNOLTA らしくオタ向けの仕様(誉め言葉)。
    • 開放 F 値 2.8 〜 3.5、焦点距離 38 〜 380mm の 10 倍ズーム、7 群 10 枚の構成、あとスーパーマクロ時の焦点距離(63.7mm)および最短撮影距離(レンズ前 4cm)と、カタログスペック上のレンズ仕様が C-730UZ と全く同じなのが気になる。という事は C-700/730UZ 用の raynox 製コンバーションレンズ群が問題無く使えるかも。CCD は 1/2.7 型 300 万画素 CCD。同 CCD 採用機の中でもトップクラスの画質。
    • スピードは 6 機種中最強。起動は実測 3 秒弱、レリーズタイムラグ 0.06 秒、撮影間隔 1.22 秒。ワイド端〜テレ端までのズーミングは 3 秒程度。このサクサク感を感じると他の高倍率ズーム機には戻れなくなる。
    • AF はパッシブセンサ(距離を測るセンサ)による位相差検出と、CCD によるコントラスト検出の両方でピント合わせをする。「ジェット AF」の名にふさわしく AF スピードでも 6 機種中最強。
    • この機種もマクロが強い。ズーム位置 63.7mm でレンズ前 4cm。C-730UZ のレンズである事を考えれば驚くほどではないが、何にしろカタログスペックの為のマクロでないまっとうなマクロなのがイカす。
    • マニュアル系もちゃんと装備。P/A/S/M の各種モード、ホワイトバランスはオートに 6 つのプリセット、カスタム設定可能。ただ、MiNOLTA のハイエンド機と言えばマニュアル露出時の不自由さが叩かれがちだったが、今回は全て 1/3 EV ステップにて制御可能に。露出補正もは± 2EV で 1/3 EV ステップで制御でき、十字キーの左右に操作第1層で割り振られている。死角がなくなった。
    • シャッタースピードは P/A で 4 〜 1/1000 秒。S/M で 15 秒まで露光可能。またタイム露光モードで 30 秒となる。
    • 絞りはワイド端/テレ端とも F8 まで。
    • 通常連写は 1.5 コマ/秒。ただし 100 万画素相当(1280x960)にすると 10 コマ/秒に。
    • 動画は640x480 / 320x240 / 160x120 の QuickTime MotionJPEGで、最高 30fps と強力。もちろん音声付。画質も上々。
    • 内蔵フラッシュはワイド端で 6.1m まで届く強力なタイプ。
    • 液晶がスゴい。1.5 型 TFT 11.3 万画素だが、フレームレートがなんと 60fps。通常のデジカメで 15fps、速いのでも 30fps 程度。ていうかバーチャファイターのゲーム画面でも撮影するかと。切り替えは背面のスイッチで行い、その際にパタッと反射鏡が動く。EVF の拡大率が割と大きめな為荒い表示に見えるかもしれないが、ピントの山は十分に確認できる。
    • アクセサリ。GN56 / 36 / 25 と豊富な純正ストロボを用意。ワイコンはあるのにテレコンは無し。外部電源パックがあるのはかなり好印象。これもカメラケースは別売り。
    • 電池は単3電池 x4。アルカリも使えるがリチウム1次電池は使えない。フタのバネがかなり固い。
    • メモリは SD。
    • ボディはカタログで見る限り最強にダサく見えるが、実際に見てみるとかなり小さく、まとまったデザインに思える。DiMAGE 7 系よりも思い切りのいいデザインのため個人的には好印象。グリップは非常に持ちやすく手ブレしにくい。もうちょっとレリーズボタン周りの傾斜があれば言うことは無い。
    • 今までの高倍率ズーム機の中でもトップクラスの性能を誇る。仕様的には CAMEDIA C-730UZ にパッシブセンサをつけたような感じだが、随所に MiNOLTA の技術が光っている。とにかく全ての挙動が速く、使っていてストレスが無い。画質も C-740UZ の次に良い。露出補正がすぐに出来たり、ダイアル上で P/A/S/M が分割されていたり、三脚にセットしたまま電池交換が行えるなど、使い勝手も非常に良い。個人的に不満らしい不満は右目ファインダになる事くらい。デザインさえ受け入れられれば最強の高倍率ズーム機がネット通販実売 40,000 円程度で手に入る。
  • Panasonic LUMIX FZ2 実売:¥49,800
    • Leica とタッグを組んで以来人気デジカメ街道を驀進中の Panasonic が昨年秋にリリースし C-730UZ と名勝負を繰り広げた FZ1 の後継機種。でも 200 万画素。
    • 開放 F 値通し 2.8、焦点距離 35 〜 420mm というコンパクトデジカメ史上最強の高倍率ズームレンズを搭載。ただし焦点距離を稼ぐ為に 1/3.2 型 200 万画素の CCD を搭載した為 FZ1 では画質的に苦戦を強いられていた。今回もほぼ同じスペックながら CCD と画像処理エンジンである「ヴィーナスエンジン」の世代交代が行われたようで、サンプル画像を見る限りでは画質が劇的に進化している。
    • 手ぶれ補正はあくまで手ぶれ「補正」であって「防止」ではないのでご注意を。過信は禁物。ちゃんと構えないとブレます。あと夕〜夜はあまり役に立たたないので、結局三脚が要る事に。ただし今回絞り優先の追加により絞り開放で撮れるので、被写界深度はかなり薄くなるもののその限りではない。少なくとも FZ1 より頼もしくなっているハズ。
    • 起動は FZ1 で約 3 秒。
    • FZ1 の AF は遅く、かなり迷った挙句に合掌する事が多いように思えていたので FZ2 では改良されてるか期待。
    • マクロは並。ワイド端 5cm。テレ端で 120cm なので倍率は低い。ただし後述のシャッタースピード優先もしくは絞り優先だとマクロモードに入らなくてもマクロ〜無限望遠が撮れる。
    • 今回からシャッタースピード優先(S)と絞り優先(A)が追加され、F 値通し 2.8 のレンズスペックを有効に活用出来る様になった。ただしフルマニュアル露出が無いのは疑問。またモードダイヤルで P/A/S に合わせてメニューから露出モードを選び、十字キーの↑を押して絞り・シャッタースピードを設定する、という割と煩雑な作業が必要。露出補正は± 2EV で 1/3EV ステップ。ホワイトバランスはオートに 3 つのプリセットがあるが、300k ステップで± 5 のホワイトバランス調整機能が加わった。
    • シャッタースピードは 8 〜 1/2000 秒。FZ1 ではおまかせモードとマクロモードではシャッタースピードが 1/8 秒より遅く出来ないという CyberShot (2002 年度版以前は 1/3 秒より遅く出来なかった)よりもヒドい仕様で、事実上室内でのマクロ撮影は出来ないも同然だったが、それができるようになっている。
    • 絞り値は不明。
    • 連写は画素数が少ない事もあって 4 コマ/秒となかなか高速。最大 7 枚まで。
    • パンタグラフみたいな構造のフラッシュは今回も健在。指で押さえればバウンス撮影にも使え、ポートレート時に威力を発揮する。ただしあまり遠くには届かない。
    • 動画は 320x 240。10fps とやや貧弱。
    • 液晶は FZ1 の仕様を継承しているなら背面と EVF の排他型。EVF はかなり拡大率が小さい為見にくいと感じた。ただ EVF の解像度からすればこれくらいの拡大率のほうがピントの山を把握しやすいかもしれない。
    • 純正ワイコン・テレコンは無し。ただしこのクラスにしては珍しく純正 ND フィルタが用意される。また 64MB の Panasonic 純正 SD と予備バッテリ、巾着タイプの収納袋がセットになったアクセサリキットが 8500 円で購入できる。バッテリだけで 6000 円、SD で 3980 〜 4280 円くらいするのでお買い得感高し。標準添付のフードは取り付けても空回りし、また内側の塗装につやがあるためやや頼りない。但し FZ1 と違い銀 / 黒ともにフードが用意される。
    • 電池は専用リチウムイオンバッテリ。かなりもつ。旅行に持っていくなら、上記のアクセサリキットの予備電池があれば万全と思われ。
    • メモリは SD。
    • 基本的に手軽に高倍率ズームを楽しむ為のカメラで、あまり凝ったことは出来ないと見たほうがいい。ただ 200 万画素としてはかなり画質が良くなっており、また FZ1 にあった 1/8 秒リミットが各種モードを使う事でなくなったため、意義のある改良になっているといえる。
    • ただ、300 万画素以上のフルマニュアル搭載機 FZ3 (FZ10?)という上位機種の登場も噂されているので油断は禁物。
  • TOSHIBA Allegretto M700 実売:¥49,800
    • メモリーカードの盟主にしてデジカメ古参企業の一つ。久々の新製品は Canon 製 10 倍ズームレンズを引っさげての登場。実は台湾 Vivitar の OEM? との噂もあり。
    • 開放 F 値 2.8 〜 3.1 と FZ2 に継ぐ明るいレンズを用意。焦点距離は 37 〜 370mm の 10 倍ズーム。CanonOEM で、これが出た時は「Canon からも 10 倍ズーム搭載機来る?」と噂になったが、今のところ発表は無い。CCD は 1/2.7 型 300 万画素。画質はディティール潰れと暗部ノイズが顕著。高画質とは言いがたい。
    • 起動・終了時間は実測で 6 秒強。C-730UZ より遅く感じた。ただしスリープモードがあり、スリープボタンを押すことでレンズを繰り出したまま省電力モードに入れる。即時性は確保されている。
    • 本体はやや大ぶり。グリップ感は悪くない。
    • AF は遅め。しかもあまり正確ではないらしい。1m と 3m のパンフォーカスを備えるのがユニーク。
    • マクロは並。ワイド端 10cm。お花撮りくらい。
    • マニュアル系はP/A/S/Mの一通りと、7 つのシーンモード(うち 1 つは連写分割)を装備。ホワイトバランスはオートのほか 5 つのプリセットと 2 つのユーザセットを備える。--シャッタースピードは 1/2 〜 1/2000 秒。長時間露光モードで 16 秒まで。あと ISO 感度ゲインアップの上限を決められるのがユニーク。
    • 絞りはワイド端/テレ端とも F8 まで。
    • 連写は高速連写モードで 4 枚/秒。割と高速。ただし 6 枚まで。
    • 動画は320x240 / 160x120 の AVI MotionJPEG Codec(恐らく PC 上では QuickTime での再生)でフレームレート 15fps。実は本体での動画再生機能が異様に充実している。
    • フラッシュは 4.4m まで。フツー。
    • 注目すべきなのは液晶。2.5 型 TFT(低温ポリシリコン)で 12 万画素。でかい上にそこそこ解像度があり、メニューが非常に見やすい。ただし EVF は解像度が低く荒く感じた。
    • 用意されているオプションに純正コンバーションレンズはないが、52mm 径のアダプタリングが標準添付されるので、raynox や Kenko などのコンバーションレンズが使用できる。また動画用に指向性マイクも用意される。
    • 電池は C-740/750UZ と同じ単3電池 x4 or CR-V3 x2。電池のもちに関しては不明。
    • メモリは SD。
    • 性能は凡庸で魅力が少ないが、純正カメラケースやリモコン、ショルダーストラップ、アダプタリングが標準で添付するなどパッケージングは非常に良い。充電池+充電器が付いてくれば完璧だったのだが。
  • FUJIFILM FinePix S5000 実売:¥59,800
    • 一眼レフのような外観を持つ「ネオ一眼」。質感は非常に高く、各社のハイエンドコンパクトモデルと比べても引けを取らない高級感がある。グリップはしやすい。ただし EVF 接眼窓がズームボタンが近い為、右目でないと覗けない。
    • 開放 F 値 2.8 〜 3.2、焦点距離 37 〜 370mm の 10 倍ズーム FUJINON 銘。かなり明るい。
    • 1/2.7 型 300 万画素スーパー CCD ハニカム HR を採用。画質はサンプルを見て判断して頂きたいが、俺なら絶対オススメしない。
    • 起動・終了時間はやや遅い。5 秒強ほど。バッファがあるため 6M モードでも撮影間隔で待たされる感は少ない。
    • AF 速度は普通。但し AF 補助光があるため暗所でも活躍するかも。MF も装備。
    • マクロは並。ワイド端 10cm。ただし実際には 5cm くらいまで寄れるらしい。いずれにしろワイドマクロ。
    • マニュアル系は P/A/S/M を一通りと、4 つのシーンモードを搭載。ただホワイトバランスはオートのほか 6 つのプリセットを備えるが、マニュアル調整はできない。
    • シャッタースピードは 2 〜 1/2000 秒。足りない分は ISO 感度をゲインアップして対処するハニカム以降の FinePix 仕様。
    • 絞りはワイド端/テレ端とも F8 まで。恐らく絞り羽 8 枚。絞った時の回折現象に有利かも。
    • 連写はやや得意で、5 コマ/秒。ただし 5 コマまで。シャッターボタンを押す以前にさかのぼっての連写(サイクル連写)も可能。
    • 動画は 320x240 の 30fps。音声付。カード一杯まで可能。
    • フラッシュは 6m まで届く強力なタイプ。ただし一眼レフスタイルの割にホットシューが装備されない為、外部ストロボが使用できない。
    • 液晶は凡庸。1.5 型低温ポリシリコン TFT。少し小型だが 30fps で視認性は良好。対して EVF はやや画素数が少なく荒い。また EVF なのに視野率 90 %。なんで?さらに悪い事にシャッター半押し時画面がフリーズするという高倍率ズーム機としては致命的な仕様のため、移動する被写体に対し合掌することはほぼムリ。
    • オプションはテレコン・ワイコン、ソフトケースが揃っている。コンバーションレンズは標準添付のアダプタリングを装着して対応。
    • 電池は単3電池仕様。標準添付はアルカリ。
    • メモリは xD のみ。てっきり CF も使えてしまいそうに思えるので注意。
    • 性能は凡庸で画質はアレ、仕様に中途半端さが漂うカメラ。ただしボディの質感と良質なユーザインターフェースがそれらを補っている。画質にどこまで納得できるかが鍵になりそう。